ショートステイ(短期入所生活介護)について
ショートステイ(短期入所生活介護)とは、要介護者が特別養護老人ホーム又は老人短期入所施設に短期間入所し、生活介護を受けるサービスの事で、居宅介護サービスに位置付けられています。
サービスの具体的な内容としましては、入浴、排泄および食事の介護その他必要な支援を行います。高齢者の心身機能の維持や回復だけでなく、家族の介護負担の軽減といったや役割も果たしています。
ショートステイ(短期入所生活介護)を利用するメリット
メリットとしては利用する高齢者は安全・安心が確保されているという点と、家族にとっては安全な場所に介護が必要な人を預け、一時的に介護負担から解放されるという点が挙げられます。
その他にも将来的な施設入所を検討している人が、施設での生活に少しずつ慣れてもらうためにまずはショートステイを活用するケースもあります。
ショートステイ事業者になるにはどんな準備が必要?
ショートステイ事業を円滑に運営していくためには、どのような準備が必要なのでしょうか。
ショートステイは高齢者が施設に入所する前の準備期間であったり、保護者の方の介護の負担を減らすなど、多様な目的を持って利用されています。
しかし、利用する側のニーズが高い反面、それに対応できるだけの十分な量のサービスが提供されていないのが現状です。他の介護事業と同様に人手不足の問題や、ショートステイ単独での運営の困難さが原因として挙げられます。
ショートステイの開業準備から開設までの流れ
ここでは開業の準備から開設までの一連の流れについて解説していきます。
1.会社を設立する
まず介護事業を始めるには、法人格の取得が条件となり、もし法人格を有していない場合は会社設立手続きを行う事からスタートします。
既に法人格を有している場合でも、会社の事業目的として「介護保険法に基づくショートステイ(短期入所生活介護)」という文言の記載が求められますので
必ず登記の変更を行ってください。
2.事業所を準備する
次に準備するものとして事業所を用意する必要があります。開設するためには事務所だけでなく、居室や食堂、機能訓練室、浴室、トイレや洗面、医務室などその他必要な設備を設けることとなります。
3.人員を確保する
次に準備が必要なのは、人員の確保です。事業所ごとに予め必要な人材や有資格者が必要となります。最低限必要な人材と人員は次のとおりです。
管理者
指定短期入所生活介護事業者は、事業所ごとに専らその職務に従事する管理者を置く必要があります。ただし、管理上支障がない場合は、当該事業所の他の職務に従事し、又は同一敷地内にある他の事業所、施設などの職務に従事することができるものとします。
医師
1人以上(非常勤でも可)
生活相談員
常勤換算方法で利用者の数が100人又はその端数を増すごとに1人以上
介護職員又は看護職員
常勤換算方法で、利用者の数が3人又はその端数を増すごとに1人以上。
*生活相談員並びに介護職員及び看護職員のそれぞれのうち1人は、常勤でなければならない。ただし、利用定員が20人未満である併設事業所の場合にあっては、この限りでない。
栄養士
1人以上。利用定員40人を超えない場合は、状況により配置不要。
機能訓練指導員
1人以上
*機能訓練指導員は、日常生活を営むのに必要な機能の減退を防止するための訓練を行なう能力を有する者とし、当該事業所の他の職務に従事することができるものとする。
調理員その他の従業者
実情に応じた適当数
4.申請書類の準備と提出
次に必要なのが、申請書類の準備と提出です。かなりの種類が必要で介護事業の申請に詳しい行政書士の方に相談されてみるのが良いでしょう。
- 指定申請書(第1号様式)
- 短期入所生活介護、介護予防短期入所生活介護事業所の指定に係る記載事項(付表1-1)
- 定款写し(原本証明が必要)
- 登記事項証明書(発行後3カ月以内の原本)
- 従業者の勤務体制及び勤務形態一覧表
- 役員名簿
- 欠格事由に該当していない旨の誓約書
- 組織体制図
- 管理者の経歴書
- 施設の部屋別施設一覧表
- 事業所の写真(外観・内部)
- 事業所の平面図
- 事業所の案内地図
- 事業所が賃貸である場合はその賃貸借契約書の写し
- 運営規程
- 資産の状況を証明する書類(決算書、資本金支払証明書、通帳写し等)(原本証明必要)
- 利用者からの苦情を処理するために講ずる措置の概要
- 損害保険加入を証明する書類
- 介護給付費算定に係る体制等状況一覧表
- 特別養護老人ホームの認可証の写し(特別養護老人ホームの場合に必要)
こちらの準備が整えば管轄の都道府県へ提出します。
・補足:助成金や融資申請
助成金申請は、会社設立前や雇用前に手続きを行う必要がある場合があり、申請ができず本来受給できる可能性があったものが受給されないといったケースも見受けられます。
もし、助成金の申請や金融機関への融資を希望される方は、申請時期や条件などについて事前に調べておくことが必要です。
ショートステイの開業資金について
開業資金については、まず法人設立費として株式会社の場合、定款の印紙代や登録免許税など約25万円(紙定款と電子認証定款で異なる)が必要です。
また物件取得費として、規模によって変動しますが、最低でも約1億円程度は見込んでおく必要があります。そのほかにも設備や備品代として約2,000万円、人件費でも従業者3ヶ月分で同じく2,000万円ほど必要となってきます。
ショートステイ開業の資金調達方法。
開業資金を全て自己資金でまかなうのは、かなり困難であるケースが多く、日本政策金融公庫など、公的な融資を受ける事で初期費用を用意する事ができます。
また、補助金や助成金を受ける事で負担を減らす事も視野に入れておくと良いでしょう。
日本政策金融公庫のような低金利ではないですが、銀行からの融資もしっかりとした事業計画書を提出する事で、融資がおりる可能性があります。
まとめ
ショートステイは、高齢者の心身機能の維持や回復だけでなく、家族の介護負担の軽減といった役割も果たしており、日ごろ介護をしている人がリフレッシュしたり、冠婚葬祭のために外出したりするときに、代わりに日常生活の介護や機能訓練をする場として活用でき、社会的意義も大きく、大切な役割を担っています。
しかし、利用者からの需要があってもまだまだ満足したサービスを提供できる事業所も少ないのが現状であり、人手不足の原因や、単独での運営が難しいといったケースが見受けられます。
安定した運営をしていくためには、利用者と従業者の双方にとって他のショートステイと違う独自のコンセプトを持ち、差別化を図る事が大切です。