ここでは訪問介護事業の起業や開業について、詳しくお伝えしていきます。
■訪問介護ステーションとは
訪問看護ステーションは、介護保険法に基づき、都道府県知事(または政令市・中核市市長)の指定を受け、保健師または看護師が管理者となって運営する事業所です。
在宅でも安心して療養生活が送れるよう、訪問看護師等が、かかりつけの医師と連携のもとに、看護サービスを提供し、心身の機能の回復を支援する事を目的としています。
主治医の指示を受け、病院と同じような医療処置も行います。自宅で最期を迎えたいという希望に沿った看護も行うなど、柔軟なサービスが提供できる事が特徴として挙げられます。
■施設が提供するサービス内容と、対象者について
看護には主に以下のようなものがあります。
- 健康状態の観察、病状悪化の防止・回復、療養生活の相談やアドバイス。
- リハビリテーション、点滴、注射などの医療処置。
- 痛みの軽減や服薬管理、緊急時の対応。
- 主治医・ケアマネジャー・薬剤師・歯科医師との連携など。
訪問介護の対象者は、子供から高齢者、症状や障害の重度に関係なく、訪問介護を必要とする全ての人が受けられます。
■開業時に必要な資格や条件について
訪問介護ステーションの開業に必要な資格や条件は下記のようになります。
■法人に関する基準
訪問介護事業を始めるには、法人格(株式会社・NPOなど)を持つことと都道府県知事から介護保険法にもとづく「指定居住サービス事業者」の指定を受ける事が必要となります。
既に介護以外の業種を行っている法人がある場合は、定款の目的の変更と登記の変更もしておきましょう。手続きの内容によっては時間がかかるものもありますので、できるだけ余裕を持って準備を行うようにしましょう。
■人員に関する基準
訪問介護事業には、管理者、サービス提供責任者、訪問介護員が必要となります。
・管理者
専らその職務に従事する常勤の者を一人配置。サービス提供責任者との兼務可。
・サービス提供責任者
介護福祉士・介護職員実務者研修課程修了者・旧介護職員基礎研修課程修了者・旧訪問 介護員養成研修1・2級課程修了者・介護職員初任者研修課程修了者で3年以上介護等の業務に従事した経験を有する者。
常勤の訪問介護員等のうち、専ら訪問介護の職務に従事する者を利用者の数に応じて1人以上配置することが決められています。
・訪問介護員
介護福祉士・介護職員実務者研修課程修了者・旧介護職員基礎研修課程修了者・旧訪問 介護員養成研修1・2級課程修了者・介護職員初任者研修課程修了したもの。
こちらは常勤換算方法で2.5人以上配置します。その中にはサービス提供責任者(管理者との兼務でない)を含めることができます。
まずはこれらの人員を確保していきましょう。サービス提供責任者や訪問介護員、介護福祉士の資格証等も必要となります。
■施設に関する基準
訪問介護事業を開業するにあたって、義務付けられている設備や備品は次のとおりです。
事務室について
事務室は必要な設備として定められています。
面積などが明確に定められてはいませんが、事務作業をするための机、椅子、書類を整理するための書棚などを置くスペースが必要になってきます。
訪問介護事業以外の事業と同じ事務所を使用する場合、カーテン、パーテーションなどの間仕切り等で明確に区分されていれば、他の事業と同一の事務所であっても構いません。
・必要な備品
訪問介護に必要な備品また衛生に関する設備を整える必要があります。
訪問介護に必要な設備や備品は次のようなものがあります。
事務所に関する備品。
- テーブルや机
- 電話やFAXなどの通信機器。
- PCやプリンターなどのOA機器。
- 書棚
- 専用の自動車
- 鍵付き金庫
- タイムカードなど
衛生に関する設備・備品。
- 手指を洗浄するための洗面台
- 液体せっけん
- 消毒液
- タオル(清潔なタオルまたはペーパータオル)など
同じ事務所を訪問介護事業所とそれ以外の事業所と併設した場合、事務スペースは別々にする必要がありますが、衛生に関する「手洗い設備」は共有が可能です。
ビルの貸しオフィスが共有のトイレしかない場合は、「感染予防に必要な手洗い設備」として許可が必要になってきます。
■運営に関する基準
・内容および手続の説明および同意
訪問看護提供に際し、ご利用者およびご家族に対して運営規程や重要事項説明書の説明をし、同意を得なくてはなりません。
・受給資格の確認
健康保険の被保険者証と介護保険の被保険者証の確認が必要です。
・居宅介護支援事業所との連携
他の保険医療・福祉サービスを提供する事業者との連携をして、心身の状況を把握し療養生活の向上を図ります。
・指定訪問看護の基本取扱方針および具体的取扱い方針
訪問看護を実施する時は、医師の指示に従い、指定訪問看護が行われるよう在宅療養をするための助言や指導を行います。適切な看護技術で心身の向上を図ります。
・主治医との連携
主治医と密接に連携し、主治医へ訪問看護計画書と訪問看護報告書の提出が必要です。
・訪問看護計画書と訪問看護報告書の作成
訪問看護計画書にはご利用者の心身の状況、主治医の指示などを踏まえ、看護目標や具体的サービス内容を記載します。
必要な書類関係や規定について
訪問看護事業の運営や利用者に対する訪問看護サービス提供等に関する記録、事業の状況を適正に維持するための諸記録や規程を準備しておく必要があります。
主な書類関係は次のとおりです。
ⅰ)訪問看護サービス提供や事業運営に必要な書類
・管理記録(事業日誌、職員の勤務状況・給与・研修等に関する記録、月間・年間の事業計画表、事業実施状況表)
・市町村等との連絡調整に関する記録
・利用者との契約に関する書類(契約書、重要事項説明書、個人情報使用同意書、利用料金表等)
・指定訪問看護に関する記録(訪問看護記録書、訪問看護指示書、訪問看護計画書、訪問看護報告書、市町村等に対する情報提供所(医療保険)等)
・会計経理に関する記録
・設備・備品に関する記録
・運営規程(事業の目的・運営の方針、従業者の職種・員数・職務内容、営業日・営業時間、指定訪問看護の内容及び利用料その他の費用の額、通常の事業の実施地域、緊急時等における対応方法、その他訪問看護ステーションの運営に関する重要事項)
・事業所のパンフレット
・訪問看護サービス提供のための各種マニュアル
また、その他にも加入が義務付けられている法律上の賠償責任を補償するための損害保険への加入や、各都道府県に提出する業務管理体制の届出なども必要となります。
■施設開業時にかかる費用について
新規事業を始めるにあたって開業資金は必要であり、また訪問介護サービスに対する報酬はサービス提供後、約2〜3ヶ月後に支払われるため、当面の支出と収入の差をつなぐ運転資金も確保しておかなければなりません。
資金調達先としては、「日本政策金融公庫」や「独立行政法人福祉医療機構」という公的な融資制度が利用可能ですので、これらを検討される事も一つの手段として挙げられます。
*「日本政策金融公庫」の国民生活事業には、「新企業育成貸付(新規開業資金)」、「新企業育成貸付( 女性、 若者/シニア起業家資金)」(共に融資限度額は 7,200 万円)及び無担保・無保証人で利用できる「新創業 融資制度」(融資限度額 3,000 万円)などがある(「新創業融資制度」を申し込む場合、原則創業資金総額 の 10 分の1以上の自己資金が必要。)。また、「独立行政法人福祉医療機構」は、建築資金、設備備品整備 資金、土地取得資金、及び経営資金を直接貸付(あるいは代理貸付)で取り扱っている。
■開業するメリット
介護を必要とする方の自宅を直接訪問し、食事・入浴・排泄など直接身体に触れる身体的な介助から、掃除・洗濯。調理などの家事面における生活援助や外出時の移動サポートなどを
行う訪問介護は、これからの高齢化社会において、ますます需要が増え続ける事でしょう。
高齢者の数が増える分だけ介助を必要とする方が増える事を意味しますので、訪問介護はこれからも幅広い分野で長く活躍する事が求められます。
なによりも介護を通じて、被介護者やご家族の方々から感謝の言葉を頂いた時は、これ以上のやりがいを感じる事はないでしょう。
また訪問介護事業は、比較的初期費用がかからず開業できるのもメリットの一つとして挙げられます。
■まとめ
管理者となる人は、訪問看護ステーションにおける労働条件の整備、財務管理、人材 育成を含む組織運営、利用者の確保、他職種の事業者との連携等、多くの課題に対処し なければなりません。
また、多様な利用者ニーズに自事業所内で的確に対応しようとす ると、事業規模の拡大や多角化を図る必要性が強まってきます。しかし、そのような様々 な経験を積んだ看護職員は多くないという事実もあります。
管理者の世代交代を円滑に進め、長期定着を図るた めには、管理者というポストを魅力的にするとともに、若手看護職員を積極的に育成していく事が介護事業を長期継続していくために必要不可欠になります。
これからの高齢化社会において、訪問介護事業はなくてはならず社会に対する貢献度も非常に高い事業です。興味・関心がある方はぜひご検討いただいてはいかがでしょうか。