
通所介護(デイサービス)とは
通所介護(デイサービス)とは、要介護認定を受けた方が、自宅で持っている能力に応じて自立した日常生活を続けていけるように、身体機能の維持・向上を目指し、日常生活上の世話や機能訓練を行うことで、利用者の社会的孤立感の解消や認知症予防を図るサービスのことです。家族などの介護者の身体的・精神的負担の軽減も目的でも提供されているものです。
通所介護事業で提供できるサービス
デイサービスには、1日型と半日型があります。利用者を送迎車で送り迎えし、次のような介護や介助を施します。
- 入浴
- 昼食
- 排せつ介助
- 機能訓練
- 看護師による健康チェック
また、利用者が楽しく通えるように、下記のようなサービスを提供するケースもあります。
- 趣味(書道、陶芸、生け花、囲碁など)
- レクリエーション
- 外出レクリエーション(近所の公園やファミリーレストランなどに外出)
開業に必要な資格や条件
では実際に、事業者としてサービスを提供する際に必要な4つの基準を紹介します。
■法人であること
株式会社や合同会社、NPO法人、社会福祉法人といった「法人」を設立して法人格を得ることが必須です。法人格でない場合は、まず会社設立手続きを行います。
また、すでに法人格を持つ場合は、定款の事業目的に「介護保険法に基づく居宅サービス事業」という文言があることを確認します。もし記載がない場合は、定款の事業目的を追記する必要があります。
■人員に関する基準
開業には、次の職種のスタッフが必要です。※のある職種に関しては、利用定員11名以上か10名以下かによって、必要人数や基準が若干異なります。
【管理者】
配置基準:常勤1名以上
資格要件:なし。常勤の生活相談員、機能訓練相談員、看護職員、介護職員との兼務可。
【生活相談員】
配置基準:通所介護の提供を行う時間数に応じて、専ら当該通所介護の提供にあたる者1人以上。
資格要件:社会福祉士、社会福祉主事のいずれか。
【看護職員】
配置基準:※
(利用定員11名以上)
通所介護の単位ごとに、提供時間帯を通じて事業所と密接かつ適切な連携を図るものとし、その提供に当たる者1名以上。専従である必要なし。
(利用定員10名以下)
通所介護の単位ごとに、提供時間帯を通じて専ら当該通所介護の提供に当たる看護職員、または介護職員のいずれか1名以上。
資格要件:看護師、準看護師のいずれか。
【介護職員】
配置基準:※
(利用定員11名以上)
通所介護の単位ごとに、その提供を行なう時間帯を通じて、当該通所介護の提供に当たる者を利用者の数が15人までは専従の職員を1名以上、15人を超える場合は5人ごとに介護職員を1名ずつ増やす必要があります。
(利用定員10名以下)
通所介護の単位ごとに、その提供を行なう時間帯を通じて、当該通所介護の提供に当たる看護職員または介護職員のいずれか1名以上。
資格要件:なし
【機能訓練指導員】
通所介護の単位ごとに、専ら当該通所介護の提供に当たる者1名以上。
資格要件:理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護師、準看護師、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師のいずれか。
→生活相談員または介護職員のうち1人以上は常勤とします。
■設備に関する基準
▶︎事務室
広さの規定はありませんが、事務を担当する人数分の机やイスなどを設置できるスペースが必要なことと、利用者に関する書類を保管するための鍵付きキャビネットを設置する必要があります。
▶︎相談室
利用者やその家族が相談をするための部屋。相談者のプライバシー保護のため、パーティション等で事務室と相談室が区分されていることが必要です。
▶︎静養室
静養室専用のベッドが必要です。 自治体によっては、複数の人が同時に使用できるように、ベッドは2台設置するよう求められる場合もあります。
▶︎厨房
食事や飲み物を準備できる場所が必要になります。環境衛生に配慮した設備であること。
▶︎食堂・機能訓練を行う場所
面積が1人あたり3平方メートル以上と定められています。 例えば、利用定員10名の場合、10名×3平方メートル=30平方メートル以上の面積が必要。収納棚などを置いて使えない床面積は除いて計算するように指導する自治体もあります。
▶︎トイレ
車椅子や、介助者が一緒に入ってドアを閉めても、安全に介助が行える広さであること。ブザーなど、通報装置が設置されていること。
▶︎浴室
入浴介助浴サービスを行う場合にのみ必要です。利用定員が多いと浴室の広さも大きくなります。 手すりを設置するなど、安全に配慮していること。脱衣所のスペースも必要です。
▶︎その他、建物の配置、構造及び設備の留意点
- 日照・採光・換気・適温調節等、利用者の保健衛生に関する事項及び防災について十分配慮されていること。
- 緊急時、非常災害時に備えて、安全な避難手段、経路を確保してあること。
- 食堂・機能訓練室、静養室、相談室は、同一階に配置すること。(エレベータ設置により利用者の移動に支障がないと認められる場合は除く)
- 段差の解消、スロープの設置など、高齢者の安全、利便の配慮、車いすの利用が可能な構造とすること。
■運営に関する基準
- 通所介護計画を作成していること。
- 従業員の勤務体制に定めがあること。
- 利用定員を超えてサービスの提供を行なってはならない。
- 提供するサービスに応じて、送迎費、長時間または超過時間のサービス費用、食材、おむつの費用、そのほか日常生活のための物品費用について、料金表などに定めがあること。
- 利用申込者に対して、運営規程の概要、職員の勤務体制、苦情処理体制などについて、同意を得ていること。
施設開業時にかかる費用
上記をはじめとする基準を満たすことができると、開業の手続きが可能となります。通所介護事業所開業時に、どういった費用がかかるのかをまとめました。
■法人設立費用
株式会社、合同会社など、法人のスタイルによって設立費用が異なります。一方、NPO法人の場合は、ほとんど費用がかかりません。ただし、株式会社や合同会社と比べて認可されるまでに3カ月半~4カ月程度の時間を要しますので、開業する時期から逆算して認可申請をする計画性が必要です。
■人件費
自治体から指定を受けるには、先述した人員を確保している必要があるため、利用者の有無に関わらず人件費がかかります。
■施設費
利用者が使う駐車場や通所する利便性を考えた立地などを考慮した物件が望ましいですが、おのずと家賃が高くなります。敷金・礼金が必要な場合もあります。
■改装費
バリアフリー化や壁を打ち抜いて間取りの変更など、大規模なリフォームが必要となる場合があります。 内容や規模によって異なりますし、業者によっても違ってくるので、複数の見積もりを取ることをおすすめします。
■事務所備品購入費
電話機・FAX機(一体型でも可)、パソコン、プリンター、書類保管用の鍵付き書棚・書庫、事務スペース用の机といす、相談スペース用の机といす、パーティションなどのついたてなど。
■車両費
送迎に適した車両のレンタル費、ガソリン費、税金、保険料などが必要です。
■その他の備品
静養室のベッド、機能訓練を行うための器具、食堂のテーブルや椅子、コップといった備品のほかに、トイレットペーパーや手袋など、消耗品も必要です。
■国からの融資、助成金が受けられる
開業資金はじめ、介護保険は申請2カ月後の入金ということを考えると、開業後4~5カ月分の運転資金があるとまずは安心です。自己資金が用意できればいうことはありませんが、用意できない場合、公的機関からの融資や助成金制度を利用することも一考です。
(助成金)
介護基盤人材確保助成金…介護関連事業主が新サービスの提供などの理由で特定労働者を雇い入れた場合、対象労働者一人あたり上限70万円まで助成されます。
介護雇用管理助成金…就業規則や賃金規定の作成、採用パンフレットの作成、求人サイトや新聞の等で従業員を募集した場合、実際にかかった費用の半額、上限100万円まで助成されます。
介護未経験者等確保助成金…介護関係業務の未経験者を雇用し、1年以上継続雇用が確実と認められる場合に助成されます。
中小企業労働環境向上奨励金(研修体系制度)…スタッフの階層に適した研修制度を導入した時に、中小事業主ならば30万円が助成されます。雇用管理制度整備計画を作成し、計画期間終了後に振り込まれます。
尚、これらの助成金は、会社を設立したり、従業員を雇用したりしてから6ヶ月~10ヶ月後に支給されます。
(融資)
日本政策金融公庫…介護事業者が利用できる日本政策金融公庫が扱う融資は次のようなものがあります。
新創業融資制度(無担保、無保証)…上限1500万円 事業を始める場合、事業を始めて間もない場合に融資が受けられます。
新規開業資金…上限7200万円(うち運転資金は4800万円以内) 事業をはじめる場合、事業をはじめて概ね5年以内に対して。
女性、若者/シニア起業家資金…上限7200万円(うち運転資金は4800万円以内) 女性、30才未満、55歳以上の方が融資を受けられる対象です。
ほかにも、融資上限額は日本制作金融公庫よりも少額なものの、都道府県や市町村などの自治体が手掛けている公的融資もあります。
通所介護(デイサービス)事業を開業する特徴やメリット
通所介護事業(デイサービス)にはどのようなメリットがあるのか、以下にまとめました。
■高齢者の自立支援につながる
自宅ではできない機能訓練やレクリエーション、趣味楽しみながら人との交流をはかることで、心身の機能維持、向上が期待できます。
自宅で入浴ができない方にとっては、介護スタッフがいることで安心して入浴することができます。
このように通所介護事業は、高齢者を元気にできるのが魅力です。
■利用者が必要とする施設づくりで安定運営を
通所介護事業に何より大事なことは「利用者が必要とする施設をつくる」ということです。他の施設に似たサービスを提供していれば、利用者からすると「他の施設を利用してもよく似たサービスを受けられる」わけですから、他所を選ぶかもしれません。
そこの施設でしか体験できないようなサービスを提供することで、利用者に必要とされ長く続く施設が運営できるのです。
まとめ
いかがでしたか?
高齢者を元気にする。通所介護事業(デイサービス)の魅力はこれに尽きます。また、介護するご家族の精神的負担を軽減できるという観点からも、これからまだまだ進んでいく高齢化社会に対し貢献できる事業です。
これらのことから、通所介護事業(デイサービス)は、非常にやりがいのある事業といえます。ぜひ、開業をご検討ください。