
介護労働環境向上奨励金とは
介護労働者の身体的負担を軽減したり、賃金など処遇の向上や労働時間などの労働条件、職場環境の改善といった雇用管理の改善を総合的に進めることで、介護労働者の労働環境の向上を図った「事業主のための助成金」のことを指します。
この奨励金は、事業主が行った雇用管理改善の内容に応じて、以下の2種類の助成に分けられます。
01 介護福祉機器等助成
介護サービスの提供事業主が、介護労働者の身体的負担を軽減するために、新たに介護福祉機器を導入し、適切な運用を行うことによって労働環境の改善がみられた場合に、介護福祉機器の導入に要した費用の1/2(上限300万円)を支給できるという助成。
この助成を受けるには、あらかじめ「導入・運用計画」を作成し、都道府県労働局の認定を受けておくことが必要になる。
02 雇用管理制度等助成
介護サービスの提供事業主が、介護労働者の福祉の増進を図るために、雇用管理改善につながる制度等を導入し、それを適切に実施することにより、一定の効果が得られた場合に、制度等の導入に要した費用の1/2(上限100万円)を 支給できるという助成。
この助成を受けるには、あらかじめ「雇用管理制度整備等計画」を作成し、都道府県労働局の認定を受けておくことが必要になる。
助成金申請〜支給までの手続き
実際の助成金を申請してから支給されるまでの流れを、助成の種類ごとに紹介していきます。
▶︎介護福祉機器等助成の場合
1 導入・運用計画の作成・提出
提出期間内に、本社の所在地を管轄する都道府県労働局へ「導入・運用計画」を提出する。
●計画期間:3ヶ月〜1年(計画開始日は、最初に介護福祉機器を導入する月の初日となる)
●提出期間:計画開始日からさかのぼって、6ヶ月前〜1ヶ月前
●計画の内容:導入・運用計画には以下の項目を盛り込む必要がある。
- 導入する介護福祉機器
- 導入機器の使用を徹底するための研修に関する事項
- 導入機器の使用方法などを職場内に伝えるためのシステムの構築に関する事項
- 介護技術に関する身体的負担軽減を図るための研修に関する事項
- 導入機器のメンテナンス方法など
- 導入効果の把握方法など
●対象となる介護福祉機器
介護労働者が使用することにより、直接的に身体的負担の軽減を図ることができ、労働環境の改善を見込まれるもので、1品10万円以上であること。
1、移動用リフト
2、自動車用車いすリフト
3、座面昇降機能付車いす
4、特殊浴槽
5、ストレッチャー
6、シャワーキャリー
7、昇降装置
8、車いす体重計
※対象となる介護福祉機器の詳細は、各都道府県の労働局へ要問合せ。
●機器導入前にアンケートを実施する
アンケート調査結果は、介護福祉機器等助成の支給要件の一つとなっている「導入効果」を把握するために必要となる。
●支給対象となる費用
- 介護福祉機器の導入費用
- 保守契約費
- 機器の導入や設置に必要な工事費
- 機器の使用を徹底させるための研修費
- 介護技術に関する心身的負担を軽減させるための研修費
●提出資料
以下の資料を提出する必要がある。
1、導入・運用計画書
2、介護福祉機器設置・整備申告書
3、介護関係業務を行っている事業主であることを確認するための書類
4、「介護労働者雇用管理責任者」の選任、周知している書面
5、介護福祉器具のカタログ、価格表、見積書
6、導入効果の把握に関する書類
7、その他管轄労働局長が必要と定める書類
2 認定を受けた導入・運用計画に基づく介護福祉機器の導入・運用
導入・運用計画の期間中から支給申請日までは、以下の項目に注意する必要がある。
- 介護労働者の雇用管理改善に努める。
- 導入・運用計画に変更が生じる場合は、その2週間前までに導入・運用計画変更書を提出する。
- 分割払いの場合は、支給対象部分の費用の支払い計画を立てる。
- 奨励金の支給終了後も、引き続き介護福祉機器の使用を予定する。
- 機器の販売者に「販売・賃貸証明書」の記入と押印をもらう。
- 期間終了までに導入効果を把握する。
- 他の助成金の不正受給をしない。
- 支給申請日までに事業主都合の解雇などをしない。
- 労働関係法令に違反しない。
3 介護福祉機器の導入効果の把握
期間終了までにアンケート調査を行い、導入前後のアンケート結果に基づき、導入効果の把握や測定を行う。
4 支給申請手続きの実施
書類の提出を行い、助成金支給の申請を行う。
支給申請期間:計画期間終了後1ヶ月間
提出場所:本社の所在地を管轄する労働局
▶︎雇用管理制度等助成の場合
1 雇用管理制度整備等計画の作成・提出
提出期間内に、本社の所在地を管轄する都道府県労働局へ「雇用管理制度整備等計画」を提出する。
●計画期間:6ヶ月〜1年(計画開始日は、最初に雇用管理制度等を導入する月の初日となる)
●提出期間:計画開始日からさかのぼって、6ヶ月前〜1ヶ月前
●計画の内容:雇用管理制度整備等計画には以下の項目を盛り込む必要がある。
- 導入する雇用管理制度等 の内容
- 雇用管理制度等の導入予定日
- 雇用管理制度等の導入についての 費用見込額
- 雇用管理制度等の導入についての 費用見込額の積算内訳
- 導入費用の支払先
- 導入費用の支払方法
- 新サービス提供に関する雇用管理制度等の内容
●対象となる雇用管理制度等について
以下が対象となる制度である。詳細は管轄の労働局へ要問合せ。
1、増員に関する措置:30万円まで
2、体系的処遇改善に関する措置:40万円まで
3、報酬管理に関する措置:40万円まで
4、労働時間管理に関する措置:20万円まで
5、能力開発に関する措置:40万円まで
6、健康管理に関する措置:20万円まで
7、新サービスの提供に関する加算:上記支給額に10万円を加算
●提出資料
以下の資料を提出する必要がある。
1、雇用管理制度整備等計画書
2、介護関係業務を行っている事業主であることを確認するための書類
3、「介護労働者雇用管理責任者」の選任、周知している書面
4、導入する雇用管理制度等の見積もり書など
5、雇用管理制度等の導入・見直しについての概要
6、その他管轄労働局長が必要と認める書類
2 認定を受けた雇用管理制度整備等計画に基づく雇用管理制度の導入・適用
雇用管理制度整備等計画の期間中から支給申請日までは、以下の項目に注意する必要がある。
- 介護労働者の雇用管理改善に努める。
- 雇用管理制度整備等計画に変更が生じる場合は、その2週間以内に雇用管理制度整備等計画変更書を提出する。
- 請求書、納品書、領収書を保管する。
- 分割払いの場合は、支給対象部分の費用の支払い計画を立てる。
- 他の助成金の不正受給をしない。
- 支給申請日までに事業主都合の解雇などをしない。
- 労働関係法令に違反しない。
3 介護職員の定着状況の確認
雇用管理制度等を導入した事業所における雇用保険被保険者の定着率が8割以上で、各種要件も満たしている場合、助成金を支給できる。詳細は管轄の労働局へ確認することを勧める。
4 支給申請手続きの実施
書類の提出を行い、助成金支給の申請を行う。
支給申請期間:計画期間終了後1ヶ月間
提出場所:本社の所在地を管轄する労働局
奨励金の支給対象となる事業主の要件
両方の助成とも、以下の全てに該当する事業主であることが必要となります。
● 介護サービスの提供を業として行う事業主であること(他業種との兼業も可)
● 雇用保険の適用事業主(企業単位)であること
●「介護労働者雇用管理責任者」を選任し、事業所内に周知を図っていること
● 賃金台帳、労働者名簿、出勤簿などの法定帳簿類を備え、都道府県労働局の要請により提出できること
● 都道府県労働局が行う審査や必要に応じ実施する現地確認に協力すること
● 導入・運用計画、または雇用管理制度整備等計画の提出日の6ヵ月前から、事業主都合で労働者を解雇 (退職勧奨による離職を含む)していないこと
● 労働保険料を滞納したことがないこと
● 過去3年以内に助成金の不正受給をしていないこと
● 本奨励金と同一の理由により、他の助成金を受給していないこと
● 過去に労働関係法令に違反したことがある場合は、送検処分を受けていない、あるいは行政機関の是正指導を受けて改善していること
まとめ
いかがでしたか?
各助成、細かな基準や要件が定められていますが、介護労働環境向上奨励金をうまく活用することで、事業主にとっても被雇用者にとっても、より良い労働環境を整えるきっかけにしてみてください。